デジタル マーケティングは運用の効率化から「事業構造そのものの変革」へと新たなフェーズを迎えています。本記事では、Google Marketing Live Japan 2026 で発表された先進事例をピックアップ。Gemini モデルに裏打ちされた検索広告キャンペーン、P-MAX キャンペーン、デマンド ジェネレーション キャンペーンなどを戦略的に組み込み、従来のアプローチの壁を破って圧倒的な成果を上げた 3 社の変革を紹介します。
東急リバブル : Google 広告のフル活用で、コンバージョン数 954% 増を達成
課題
不動産仲介業として約 2,000 名の営業担当者を抱える東急リバブルは、真のトップブランドとして社会に認知され、選ばれるブランドをつくりあげることを目指していました。その中で最重要課題となっていたのが、事業成長の鍵を握る「売却査定」のリード獲得強化です。これは事業の目標達成に向け、最も貢献度の高い領域です。その獲得に向け、Google 広告における獲得施策を見直し、まずは運用の属人化解消に着手すべく、博報堂グループ、Google との 3 社連携体制を構築し、運用変革に取り組みました。
1. キャンペーンの拡大と Google の AI の相互学習強化
Google 広告内での Gemini モデル の学習効果を最大化するため、従来の検索広告に加え、P-MAX キャンペーンおよびデマンド ジェネレーション キャンペーンを導入しました。全キャンペーンで最終 KPI である「売却査定」を共通コンバージョンに設定し、P-MAX キャンペーンで成果が出たキーワードを検索広告に追加。さらに、2,000 以上の新クリエイティブを投入したほか、成果の高いプレースメントには、デマンド ジェネレーション キャンペーンでピンポイントでターゲティングするなど、各プロダクトのデータが相互に作用する相乗効果を生み出しました。
2. 検索キャンペーン向け AI 最大化設定の活用
Google の AI がユーザーの検索意図に合わせて最適なサイト内ページへ自動誘導する「最終ページ URL の拡張」をはじめとする、「検索キャンペーン向け AI 最大化設定」を優先導入しました。一方で、意図しないページへの配信を防ぐため、事前に広告の着地先となるランディング ページの構成見直しや、配信除外ページの設定といったチューニングを 3 社で徹底的に行いました。
売却査定コンバージョン数が劇的に拡大
Gemini モデルの学習基盤を整え、各プロダクト間でのデータ循環を行った結果、最注力指標であった売却査定の獲得において、前年比で 954% 増という、劇的な成果を達成しました。
この成果を踏まえ、同社はファーストパーティ データを活用した、質の高いリードの獲得施策にも踏み出しました。店舗などで蓄積した「査定情報」や「売却実績」などの自社オフライン データをインポートし、過去購入客の売却タイミングを狙った配信や類似ユーザーへのアプローチなど、成約率の高いリード獲得へ向けた基盤整備を進めています。さらに、データ計測・連携の精度を高めるため、拡張コンバージョンの実装に加え、Google タグ ゲートウェイの実装準備を推進しています。
売却査定コンバージョン数(前年比)
第一生命保険 : 広告構造の再構築で、コンバージョン数 146% 増を達成
課題
創業 125 年目を迎え、高い社名認知を誇る第一生命保険ですが、個別商品名の指名検索量の少なさや、一般キーワードにおける CPC(クリック単価)や CPA(顧客獲得単価)の高騰に悩まされていました。その課題を解決するために SNS 広告の運用強化に取り組みましたが、運用工数の増大やクリエイティブの摩耗が壁となり、思うような成果につながりませんでした。そこで同社は、Google 広告の構造をゼロベースから再構築する決断を下し、注目したのが Google の AI を用いた自動化のプロダクトです。
1. 検索キャンペーン向け AI 最大化設定の活用
主要なビッグ キーワードの高騰に対抗するため「検索キャンペーン向け AI 最大化設定」を導入しました。その結果、直接商品と関連性が薄いと想定していた「貯金 1,000 万」「老後に備える保険」など、従来の手動運用では拾いきれなかった検索意図(インテント)をカバーし、指名検索量に頼らない安定的なコンバージョン獲得基盤を確立しました。
2. 配信拡大と定期的な PDCA
P-MAX キャンペーンを導入し、YouTube、ディスプレイ、検索、Discover、Gmail、マップなど、Google が保有する全配信面へ網羅的に広告を展開しました。
3. 定期的な PDCA サイクルの確立
Gemini モデルによる予算最適化を図るとともに、2 週間に 1 回の頻度で配信先プレースメントを精査するサイクルを徹底し、効率のいい面に配信を集中させました。
CPA を維持しながら、コンバージョン数が増加
この一連の再構築により、注力商材の「ステップジャンプ」において、CPA を維持したままコンバージョン数 146% 増という大きな成果を達成しました。この高い成果を受け、SNS 広告の予算比率を削減。予算配分の全体最適化を実現しました。
さらに、Google の AI による自動化を進めたことで、それまで大量のクリエイティブ制作や審査などの手動運用に追われていたマーケティング チームのリソースも解放。オペレーションの手間から脱却したことで、浮いた時間を「資料請求から成約への転換率向上」という新たな重要施策へ再投資しています。
注力商材におけるコンバージョン数(施策前比)
メルカリ : 「休眠顧客の再獲得」へアプローチし、全体 ROAS 1.3 倍を実現
課題
年間取引総額 1.2 兆円を超える成長を見せるメルカリは、重要指標である MAU(月間アクティブ ユーザー数)の成長鈍化に直面していました。MAU の拡大には「休眠顧客の再獲得」も不可欠です。しかし、事業部として MAU 向上を目指す一方で、デジタル マーケティング チームは「新規会員獲得数」が主要な KPI となっており、休眠顧客の再獲得を正しく評価する仕組みを持っていませんでした。部署ごとに異なる KPI を追っていた背景もあり、新規、既存、休眠といった顧客セグメント別の最適アプローチが不十分な状態が続いていたのです。そこで同社は、Google 広告を事業成長へ真に貢献させるため、評価指標の抜本的な変革へと舵を切りました。
1. 休眠顧客の再獲得を正式な KPI に設定
まずは、休眠顧客に対する検証を重ね、広告接触がなくても自然復帰するユーザーの影響を考慮したシミュレーションを実施。休眠顧客の定義として最適な期間の特定に至りました。そして、休眠顧客の LTV(顧客生涯価値)を可視化して、新たなマーケティング成果の指標とすることで部署間の目線を揃え、「休眠顧客の再獲得」を正式な KPI として定着させました。
2. 顧客ライフサイクル目標の導入とデータ基盤整備
顧客セグメントに応じたアプローチを最適化するため、P-MAX キャンペーンの「顧客ライフサイクル目標」を導入。休眠顧客には「リエンゲージメントのみ」モード、新規顧客には「新規顧客の価値」モードを適用しました。さらに Google 広告データ マネージャーの活用やオフライン コンバージョンのインポートなどデータ基盤を整備し、Google の AI が正しく学習できる環境を構築して、P-MAX キャンペーンを最適化に導きました。
3. 検索キャンペーン向け AI 最大化設定の活用
変化し続ける多様な検索行動を捉えるため、「検索キャンペーン向け AI 最大化設定」を導入しました。「最終ページ URL の拡張」や「自動生成アセット」を活用し、従来の経験則や過去のデータだけでは予測が難しかった膨大な検索意図(インテント)を、自動かつ網羅的に捕捉して獲得につなげる体制を整えました。
過去最高の MAU を達成し、ROAS を改善
評価指標を揃えて Google の AI をフル活用した結果、MAU と GMV(流通取引総額)は、2026 年 6 月期の通期連結決算で過去最高を更新しました。特に休眠顧客への広告配信比率は従来の 4.5 倍に増大し、全体 ROAS(広告費用対効果)も 1.3 倍へ改善。新規獲得にとどまらず「休眠顧客の再獲得」が事業再成長の強力なレバーとなることを実証しました。
同社は、この成功事例をグローバル事業へ横展開していくことを検討しています。また、商品フィードのアトリビュート改善や、プライバシーに配慮したファーストパーティ データの活用を推進し、顧客セグメントに応じたコンバージョン値ベースでの最適化を強化していく方針です。
全体 ROAS(施策前比)