本記事は、US 版 Think with Google のポッドキャスティング番組「Modern Marketers」を日本語に翻訳し、抜粋・編集したものです。この番組では、業界をリードするマーケターやブランドの責任者らに話を聞き、現代のマーケティングのあり方や実践をひもときます。今回は McDonald’s のエリザベス・キャンベル氏(Vice President of Marketing)が登場しました。
動画を見る
南アフリカ旅行で実感した McDonald’s で働くことの意味
キャンベル氏は、McDonald’s での 20 年以上のキャリアで最も記憶に残る瞬間の 1 つとして、母親との南アフリカ旅行中に経験した出来事を挙げています。当時のキャンベル氏は、マクドナルドに転職して 2、3 年目。普段あまり旅行をしない母親のために初めてパスポートを取得し、一緒に南アフリカへ向かいました。
その旅行中に立ち寄った McDonald’s の店舗で、キャンベル氏は自身がリブランディングを担当したコーヒー用の紙カップを目にしました。米国で担当した仕事が国際的に展開されていることに、そのとき初めて気づいたそうです。
キャンベル氏は母親に「これは私が手がけたカップだ」と説明しましたが、最初は理解してもらえませんでした。「そんなことよりコーヒー飲もう」と軽く受け流す感じだったそうです。「だってあなたが働いているのはアメリカでしょう? ここは南アフリカよ?」と。しかし「違うんだよ。これは私が仕事でデザインしたカップなんだ」と言うと、母親は驚き「すごいね。あなたを誇りに思うよ」と喜んでくれたと話します。
この出来事を通じて、自身の仕事が McDonald’s の世界中のビジネスに影響を与えていることを実感できたと話すキャンベル氏。その喜びを母親と分かち合えたことで、さらに特別な瞬間になったと振り返りました。
生活者からの自然発生的な関心に乗った「グリマスの誕生日キャンペーン」
キャンベル氏が 2023 年に手がけたグリマスの誕生日キャンペーンは、SNS で大きな話題となり、McDonald’s の売り上げにも大きく貢献しました。
北米とフィリピンで展開したこのキャンペーンは、McDonald’s で昔から存在するキャラクターであるグリマスの誕生日を祝うというものです。
キャラクターの色に合わせた紫のグリマスシェイクなどが SNS 上で大きな話題を呼び、TikTok を中心に多くの動画が集まりました。動画の内容は、グリマスシェイクを飲んだ後に奇妙なことが起こるというもので、そのユーモラスな内容が若者たちの間で人気となりました。
このキャンペーンが成功した理由として、キャンベル氏は、McDonald’s から人々に押し付けるのではなく「あくまで人々の自然発生的な興味関心に乗っかる形で展開した」ことがポイントだったと話します。
当時は、別の企画の影響もあり、グリマスなど懐かしのキャラクターたちに注目が集まっている状況でした。SNS 上でも「グリマスってそもそも何?」「あの紫のキャラクターに名前があったの?」といった疑問や興味が一気に広まっていたそうです。そうした生活者のインサイトを捉え、誕生日という切り口でグリマスに関する話題を自然に提供することで、無理なくストーリーを展開したのです。
その結果、グリマスシェイクを求めて多くの人々がマクドナルドに来店し、売り上げに大きく貢献しました。顧客のインサイトを捉え、SNS でのエンゲージメントと実店舗への来店を効果的に結びつけた好例です。
前者のエピソードは、駆け出しだったころのキャンベル氏の仕事であっても、マクドナルドのビジネスにおいてグローバルなインパクトを与えたこと、後者のエピソードは、彼女の手がけたキャンペーンがソーシャルメディアを活用したエンゲージメントの有効性を示した、と言えるでしょう。ポッドキャストでは他にも、キャンベル氏自身のキャリアや、顧客とのエンゲージメントなどについて話しています。