コンテンツに​進む

新しい​ Google 広告アカウントを​作成しますか?

新しい​ Google 広告アカウントを​作成しようと​しています。​新しい​アカウントを​作成しなくても、​1 つの​アカウントで​複数の​キャンペーンを​作成できます。

新しい​ Google 広告アカウントを​作成しますか?

新しい​ Google 広告アカウントを​作成しようと​しています。​新しい​アカウントを​作成しなくても、​1 つの​アカウントで​複数の​キャンペーンを​作成できます。

カインズが​顧客体験向上の​ための​実証実験、​屋内 GPS で​売り上げは​ 6% 増の​予測

中原 啓智

Social Module

共有

近年の​小売業界は、​難題に​直面しています。​すな​わち、​多様化する​生活者ニーズに​対応して​顧客満足度を​上げると​同時に、​オペレーションも​効率化しなくてはならないと​いう​ジレンマを​抱えているのです。

オペレーションコストの​効率化と​顧客体験価値の​向上を​両立させる​ために​できる​ことと​して、​2023 年 3 月の​記事では​「顧客体験を​起点とした​デジタル投資」を​提案しました。​データドリブンで​顧客体験の​向上を​図る​ことで、​より​本質的な​オペレーション改善が​可能に​なるだけでなく、​チャネル横断での​連係もしやすく、​PDCA も​素早く​回せるようになります。

顧客体験を起点としたデジタル投資を表した図。顧客体験、実店舗・EC 業務、物流、調達がリング上に連なっている

その​ための​一歩目は、​顧客に​関するきめ細やかな​行動分析です。

精緻な​データの​取得や​分析は、​EC 上では​当たり前に​なりました。​しかし、​実店舗では​そう​簡単では​ありません。​顧客が​どのような​経路で​店舗内を​回遊し、​どの​棚の​前で​立ち止まり、​最終的に​何を​いくら購入したのかと​いった​購買行動データは、​ブラックボックスに​なりがちです。

実店舗でも、​こうした​データが​顧客の​明示的な​許諾のもとに​取得できれば、​オンライン上での​行動と​重ね合わせる​ことで、​これまで​断片的に​しか​見えていなかった​ヒトや​モノの​動きを​より​深く​理解できるようになります。​さらには、​店舗内の​購買行動データに​基づいて、​新たな​マーケティング施策を​展開できる​可能性さえ​あります。

こうした​課題に​挑戦しているのが、​ホームセンターチェーンを​展開する​株式会社カインズです。

同社は​ 2024 年前半に、​Google、​後述する​ Oriient​(オリエント)と​共同で​実証実験を​展開しました。​実店舗での​顧客行動データを、​プライバシーに​配慮しながら​どう​収集するかと​いった​課題に​どのように​取り組んだのか、​詳しく​紹介します。

実店舗と​ EC を​シームレスに​ —— “ IT 小売業 ” を​目指すカインズ

全国に​約 240 店舗を​展開する​カインズは、​デジタルと​実店舗を​シームレスに​つないで​新たな​購買体験を​提供する​ “ IT 小売業 ” 化を​掲げています。​今回の​取り組みも​その​一環です。

今回の​取り組みで​まず​重要なのが、​実店舗内での​行動データを​取得する​方​法です。​カインズでは、​スマートフォンアプリの​「Oriient IndoorGPS」を​活用しました。

Oriient は、​屋内 GPS 機能を​搭載した​店内ガイドアプリです。​アプリを​インストールした​スマホを​持っていれば、​ビーコンや​ AI カメラと​いった​ハードウェアや​ Wi-Fi を​設置せずとも、​誤差 1m ほどの​正確さで​店舗内の​位置を​把握できるのが​特徴です。​スマホの​センサーのみで​位置を​計測する​ため、​タイムラグが​なく、​シームレスに​動きます。

Oriient は、​Google Cloud の​パートナーです。​すでに​ Google Cloud を​活用していた​カインズでは、​既存の​クラウド基盤を​用いて​データ収集や​分析が​できる​ことから、​Oriient の​活用を​決めました。

屋内 GPS と​店内ガイドを​組み合わせた​「Oriient」

Oriient は​位置情報の​取得以外に、​店内の​回遊を​促すための​さまざまな​機能を​搭載しています。

今回の​事例で​使用したのは、​次の​ 3 つの​機能です。

  • ルート検索機能:現在地から、​探している​商品の​ある​棚までの​最短ルートを​示す機能
  • チラシ商品の​お知らせ機能:チラシに​掲載した​おすすめ商品の​近くを​通った​際に、​ポップアップを​表示し、​販売促進を​図る​機能
  • 宝探し機能:店舗マップ上に​星マークを​ランダムに​表示し、​そのルートを​通過すると​星を​集められる​ミニゲーム機能。​星を​集める​ことで​特典を​付与できる。​後述の​通り、​今回の​事例では、​集めた​星の​数に​応じて​景品を​渡した
Oriient の紹介動画

3 つの​機能の​紹介動画は​こちら

カインズでは、​2024 年 2 月 28 日から​ 3 月 7 日に​かけて、​ある​店舗にて、​ランダムに​声を​掛けて​同意を​得た​顧客 163 人を​対象に、​実証実験を​行いました。

実験では、​対象者を​ランダムに、​グループA​(コントロールグループ)と​グループ B​(テストグループ)の​ 2​ つに​分類。​両者に​ Oriient を​インストールした​入れた​スマホを​持って、​店内で​買い物を​して​もらいました。​ただし、​グループ B に​のみ上で​挙げた​ Oriient の​ 3 つの​機能を​任意で​体験して​もらい、​両者の​滞在時間や​平均購買金額を​比較しました​(*1)。

な​お、​今回の​実験に​あたっては、​Google と​カインズが​密に​連携し、​実験の​設計は​ Google が、​実施は​カインズが​担当。​個人が​特定できない​状態の​データを​ Google と​カインズが​共同で​分析しました。

グループ B のある参加者の店内回遊ルート。星は上で挙げた宝探し機能を示している

グループ B の​ある​参加者の​店内回遊ルート。​星は​上で​挙げた​宝探し機能を​示している

実験時は​デモアプリを​使用した​ため、​ルート検索機能の​対象は、​チラシに​掲載した​商品のみ。​また​ミニゲーム機能では、​集めた​星の​数に​応じた​景品を​用意しました。

曜日や​時間帯に​よる​顧客層の​違いを​考慮し、​平日と​休日​それぞれ 9 時 〜 16 時の​ピーク時間帯と​それ以降に​分割して​分析しました。

Oriient 活用で​滞在時間・購買金額ともに​アップ

た​とえば​店舗が​家族連れで​最も​混み合う、​休日の​ 9 時 〜 16 時に​実験に​協力してくれた​ 35 人​(グループで​体験する​場合は​ 1 人と​カウント)を​対象に​分析を​すると、​Oriient の​ 3 つの​機能を​利用した​グループ B の​平均滞在時間は、​グループ A に​比べて​ 39% の​リフトが​確認できました​(*2)。​サンプルは​小さい​ものの、​P 値は​ 5% で、​100 回実験を​行った​場合に​ 95 回は​滞在時間の​リフトが​観測できる​程度の​確からしさです。

また​同時間帯の​平均購買金額を​比べると、​グループ B では​ A に​対して​ 223% の​リフトを​確認。​これも​ P 値は​ 13% と、​100 回の​実験中 87 回は​リフトが​観測できる​程度に​確からしい​数値です。

これらの​結果を​ピークタイムの​売り​上げや、​実験後の​アンケート調査に​基づく​Oriient 機能の​利用意向率などと​掛け合わせると、​店舗全体の​売り上げに​与える​インパクトは​ 6% 程度と​推計できました。​小売業の​ビジネスモデルに​おいて、​6% は​非常に​大きな​数値だと​言えるでしょう。

さらに、​顧客の​エリア別の​滞在時間を​分析した​ところ、​店舗レイアウトや​棚割り​(商品の​陳列位置の​決定)を​最適化する​ための​ヒントも​得られました。

た​とえば​下図を​見てください。​商品エリア A と​ B は​離れた​位置に​ある​ものの、​両者の​滞在時間には​相関関係が​ありました。​逆に、​隣接していても、​相関関係が​確認できず、​顧客の​動線が​つながっていない​場合が​ある​ことも​見て​取れます。

商品エリアごとの滞在時間の相関を示した図。エリア A を基準にした時に、数値(相関係数)が高いエリアほど相関関係が強い

商品エリアごとの​滞在時間の​相関を​示した図。​エリア A を​基準に​した​時に、​数値​(相関係​数)が​高い​エリアほど​相関関係が​強い​(全体​:n=163)

このような​インサイトは、​データドリブンな​形で​店舗の​レイアウトや​お客様の​店舗での​購買体験を​考える​上で​重要な​示唆を​与えてくれます。

な​お今回の​実験では、​平日と、​休日の​ 16 時以降の​セグメントでは、​滞在時間と​購買金額の​リフトは​確認できませんでした。​今回は​デモ用アプリを​用いた​ため、​検索可能な​アイテム数が​限られていた​こと、​一部の​ UI が​英語のままであったことに​より、​短時間で​効率的に​買い物を​済ませたい​顧客の​ニーズには​対応しきれていなかった​ことが​原因と​して​考えられます。​アプリを​本格導入を​した​場合には、​より​多くの​商品を​日本語で​快適に​検索できるようになる​ため、​効果は​さらに​高められると​予想されます。

実店舗の​データ分析で​顧客単価や​利益率向上へ

Oriient のような​ソリューションを​通じて​店舗内の​回遊ルートや​滞在時間と​いった​データを​顧客の​明示的な​許諾のもとに​収集する​ことで、​店内の​位置情報に​基づく​新しい​顧客体験の​創出と、​店舗運営の​継続的な​改善が​可能に​なります。

具体的には、​レイアウトの​最適化や​動線設計の​改善、​人流の​多い​場所への​人気商品の​配置など、​効果的な​棚割り設計も​実現しやすくなるでしょう。​在庫管理の​効率化や​需要予測の​精度向上と​いった​オペレーション改善に​もつな​げられる​ため、​最終的には​顧客単価と​利益率の​向上に​寄与します。

このような​取り組みは、​2 つの​重要な​好循環を​生み出します。

1つ目は、​データに​基づいた​購買体験と​店舗運営の​継続的な​改善の​サイクルです。​ 顧客の​行動や​購買データを​分析する​ことで、​より​良い​購買体験を​提供できるようになり、​さらに​顧客満足度向上に​つながる施策を​継続的に​実施できます。

そして​2 つ目は、​本部での​データ分析が​進むことで、​販売チャネルや​店舗間の​連携が​強まり、​さらなる​集客が​可能に​なると​いう​サイクルです。​ 集客数の​増加は​収集できる​データ量の​増加に​もつながり、​分析の​精度向上にも​役立ちます。

特に​カインズのような​広い売り場面積を​持ち、​多品目を​扱う​店舗に​来店する​顧客は、​探している​商品を​見つける​手間が​かかると​いう​課題を​抱えています。​これに​対して、​デジタルと​データの​力で​解決を​図るべく、​カインズは​現在、​実証実験の​結果を​踏まえて​ Oriient の​導入を​検討しています。

さらに、​収集した​データは​リテールメディアと​しての​活用も​期待できます。​たとえば、​顧客が​特定の​棚の​近くを​通った​際に、​関連商品の​クーポンや​タイムリーな​広告を​手元の​アプリに​表示すると​いった​新しい​購買体験を​創出できます。

顧客の​属性と​位置情報を​組み合わせる​ことで、​これまでに​ない形での​リアル店舗での​購買体験と​リテールメディアの​融合が​実現でき、​メーカーに​とっても​貴重な​顧客接点と​なる​ことが​期待できます。

カインズのような​小売企業や​メーカーと​顧客が​ Win-Win-Win の​関係を​作る​ための​鍵は​データです。​これからの​マーケターには、​オンライン、​オフラインの​分断を​越えて​集まる​新たな​データを、​顧客と​収益の​ために​どう​活かすかと​いう​新しい​発想が​求められるでしょう。

広告に​加え、​クラウドの​テクノロジーも​提供する​ Google では、​小売業界に​おける​実店舗の​デジタル化を​今後も​支援し続けていきます。

Contributor:武藤 亮平​(シニア アカウント エグゼクティブ)​/ミン グエン​(APACコンシューマー&マーケットインサイト・シニアマーケティングリサーチマネージャー)

396_offlineretail_Author_220_230309_ver2_B

中原 啓智

シニアマーケティングリサーチマネージャー

出典 (2)

*1: 全体​ n=163、​調査時期:2024 年 2 月 28 日 〜 3 月 7 日。​カインズが​ Google の​調査設計支援を​受けながら​実施。​ランダムに​選ばれた​店舗入口にて、​ランダムに​顧客に​声掛けを​行い​調査への​同意を​得て、​ランダムに​グループ A と​ B への​振り分けを​行った。​同意を​得た​顧客の​位置情報と​アプリの​使用状況データのみを​取得し、​それ以外の​識別情報などは​取得しなかった。

*2: Mann-Whitney U Test, p.value = 5%. 9am - 4pm on Saturday or Sunday (n=35).

ページ​先頭に​戻る