コンテンツに​進む

新しい​ Google 広告アカウントを​作成しますか?

新しい​ Google 広告アカウントを​作成しようと​しています。​新しい​アカウントを​作成しなくても、​1 つの​アカウントで​複数の​キャンペーンを​作成できます。

新しい​ Google 広告アカウントを​作成しますか?

新しい​ Google 広告アカウントを​作成しようと​しています。​新しい​アカウントを​作成しなくても、​1 つの​アカウントで​複数の​キャンペーンを​作成できます。

広告 KPI の​再定義で​ビジネス成長を​加速:VBB を​導入した​ SB​I証券と​トライト

高沢 数樹

Social Module

共有

皆さんが​日々​運用している​広告の​ KPI は、​企業の​ビジネス目標と​一致しているでしょうか。​ここで​ねじれが​生じていると、​広告が​ビジネス成長へ​寄与せず、​マーケティング活動が​縮小していく​ことになります。

た​とえば​創業期など​顧客拡大を​目指す段階では、​ビジネスと​マーケティングの​目標は​一致しやすい​ものです。​広告の​ KPI と​しても、​顧客の​獲得数を​追い​かければ、​それが​すなわち顧客拡大と​いう​ビジネス目標とも​整合性の​取れる​ものになります。

しかし​事業が​成熟期に​入ると、​ビジネス目標が​顧客の​拡大から​利益率の​向上へと​移り​変わる​ことがあります。​その​ときに、​マーケティングの​観点でも​目線を​そろえ、​KPI を​再定義する​必要が​あるのです。

こうした​「ねじれ」​現象の​要因と、​解決策と​しての​ KPI の​再定義の​進め方に​ついては、​前回の​記事で​解説しました。

今回は、​ビジネス目標と​マーケティング目標の​目線を​そろえた​後、​それを​どのように​広告の​運用に​落と​し込めばいいのかを​解説します。

VBB 導入を、​ビジネス成長に​つなげる​ために

前回の​記事で​取り上げたように、​ねじれを​解消する​シンプルな​方​法は、​ビジネス成長に​直結する​指標を​広告の​ KPI に​据える​ことです。​たとえば​コンバージョン​(CV)​数ではなく、​広告費用対効果​(ROAS)を​ KPI と​すれば、​売り​上げや利益などの​ビジネス目標に​対して​広告の​直接的な​貢献を​理解しやすくなります。

その​際に​使える​手法の​ 1​ つが、​Google の​「価値に​基づく​入札戦略​(Value Based Bidding、​VBB)」 です。​VBB では、​CV が​発生する​際に、​それぞれの​ CV の​価値が​いくらに​なるかを​「CV 値」と​して​ Google 広告に​返します。​その​データを​基に​ Google AI が​指定した​広告予算に​対して​件数ではなく​ CV 値を​最大化したり、​キャンペーンごとに​設定した​目標 ROAS の​達成に​最適化したりします。

ただし、​VBB を​使いこな​すためには、​その​仕組みを​正しく​理解しなければいけません。

VBB は​売り​上げや利益に​つながる可能性の​高い​顧客を​優先的に​獲得する​よう入札価格を​自動で​調整しますが、​逆に​収益性の​低い​顧客への​過剰投資は​避ける​方​向に​働く​ため、​獲得できる​ CV 数は​かえって​減少する​ことがあります。​その​ため、​CV 数を​ KPI に​したまま​運用すると、​広告効果が​悪化して​見えてしまいます。​だから​こそ、​まずは​ KPI に​ついて​認識を​そろえる​ことが​何より​重要なのです。

また​ CV 値と​してどのような​値を​返すか、​数値の​定義を​考える​ことも​重要です。​オンライン上で​購入まで​完結する​ビジネスモデルで​あれば、​そのまま​実数を​ Google 広告に​返して​売り上げを​最大化したり、​ROAS を​調整したりするのが​最も​シンプルな​方法です。

しかし、​成約までに​時間が​かかる、​あるいは​オンラインだけでなく​店舗など​オフラインで​複数の​プロセスを​介す必要が​ある​ビジネスモデルでは​そう​簡単では​ありません。​今回は、​VBB 導入で​ビジネス成長を​実現した​株式会社SB​I証券の​事例と​トライトグループの​事例を​見ていきましょう。

できるだけ後ろの​工程で​発生する​オフライン CV を​インポートした​ SB​I証券。​一方、​これまでの​ユーザーの​データを​基に​傾向値や​予測値を​考慮して​実態から​大きく​逸れない形で​従来の​ CV に​対して​数値を​設定した​トライトグループ。​2 社は​具体的に​どのように​取り組んだのでしょうか。

「優良顧客を​優先的に​獲得」​SB​I証券の​ VBB 導入戦略

SB​I証券では、​国内株式の​売買手数料などを​ 0 円に​する​「ゼロ革命」を​通じて、​顧客満足度を​高めユーザー拡大を​図っています。​2024 年 2 月には、​国内で​初めて​証券総合口座が​ 1,200 万口座を​超えました。

一方、​手数料を​無料化に​した​ことで​収益は​減少します。​顧客に​とっての​利便性を​高める​ことと​引き換えに、​いかに​収益性を​高めるかが、​同社の​経営課題の​ 1​ つでした。

同社が​まず​着手したのは、​広告 KPI の​見直しです。​従来の​ CV ポイントは​「証券口座開設の​申し込み」でしたが、​実際には、​申し込み後に​本人確認書類の​審査を​経て​口座を​開設するまでの​間に、​半数近くが​離脱している​ことが​確認できました。

そこで、​広告 KPI を​「証券口座の​開設完了数」 に​変え、​より​ビジネス目標に​近づけたのです。

VBB 実装に​向けた​ 3 つの​準備

VBB 実装に向けた 3 つの準備。グループ内の連携、グループ全体のプライバシーポリシーを整備、外部ツールの活用

KPI を​再定義して​組織内の​目線を​そろえた​ところで、​VBB の​実装に​取り掛かりました。

実装の​ために​同社が​取り組んだのは、​大きく​次の​ 3​ つです。

1 つ目は、​グループ内の​連携です。​今回の​事例では、​SB​I証券の​デジタル営業部と、​SBIホールディングスの​社長室ビッグデータ担当が​ VBB 導入に​向けて​連携。​デジタル営業部内に​不足していた​データ分析や​活用の​ノウハウを​ビッグデータ担当が​補い、​実装まで​一貫して​サポートしました。​また​デジタル広告運用と​データ活用と​いう、​異なる​専門知識を​持った​チームが​それぞれの​強みを​活かす​ことで、​広告施策での​データ活用の​ノウハウも​社内に​蓄積できたのです。

VBB の​実装を​支えた​ 2 つ目の​ポイントは、​グループ全体の​プライバシーポリシーを​整備できていた​ことです。​SBIグループでは、​グループ共通の​プライバシーポリシーの​中で、​顧客データの​マーケティング活用に​関する​利用規約を​定めています。​これに​より、​社内の​ファーストパーティ データを​スムーズに​マーケティング施策に​活用できました。

そして​ 3 つ目は、​外部​ツールの​活用です​新たに​ CV ポイントとした​「証券口座の​開設完了」数を​追跡するには、​本人確認書類の​審査を​経た​後の、​口座開設有無の​データが​必要です。​これは​社内に​保管された​データなので​ Google 広告の​タグでは​取得できません。

そこで​広告領域ファーストパーティ データ活用プラットフォーム​「KARTE Signals」を​利用しました。​新たな​開発リソースを​かけずに、​オンラインで​発生する​広告関連の​データと​オフラインで​発生する​口座開設に​関する​データを​統合する​仕組みを​構築。​プライバシーを​遵守した形で、​Google 広告に​口座開設の​ CV 情報を​返せるようになりました。

CV 値を​加味した​ VBB 導入で、​口座開設の​完了数は​ 13% 増

これらの​準備を​進めた​上で​ VBB での​運用を​開始。​最終的な​口座開設まで​進む可能性の​高い​顧客を​優先的に​獲得するよう、​入札を​自動調整しました。

CV 値を​加味した​ VBB の​キャンペーン​(目標広告費用対効果に​基づく​入札)と、​CV 値を​加味せずに​ CPA に​最適化した​「目標コンバージョン単価入札」での​キャンペーンを​ Google 広告の​カスタムテスト機能を​用いて​同じ​割合で​配信した​ところ、​VBB の​方が​ CV 値が​ 22.9% 高い​結果と​なりました。​また、​口座開設の​完了数も​ 13% 増加しました。

施策を​担当した同社の​貝原弘樹氏​(デジタル営業部)は​「VBB の​導入を​通じて、​収益性の​向上と​いう​事業目標に​対して​マーケティングが​貢献できる​ことを​明確に​示すことができました。​導入の​準備と​して、​広告KPI を​『口座開設の​完了数』と​いう、​収益化に​より​近い​ものへ​見直す​ところから​データ整備まで、​ホールディングス側の​社長室ビッグデータ担当と​二人三脚で​進められた​ことが​成功に​つながったと​思います。​今後は​ファーストパーティ データを​さらに​活用しながら、​口座開設後の​期待収益に​応じた​広告配信なども​視野に​入れています」と​話しています。

人材サービス運営の​トライトグループ、​ROAS 改善への​試行錯誤

続いて​紹介するのは、​医療福祉業界や​建設業界に​特化した​人材紹介、​派遣サービスなどを​展開する、​トライトグループの​事例です。

同グループの​人材派遣サービスでは、​就業を​希望して​登録した​人材の​資格や​経験などから​算定した​派遣料金が​売り上げとなります。

従来は​サービスへの​「ユーザー登録数」を​ KPI と​して​広告を​運用してきましたが、​派遣先決定に​寄与しにくい、​あるいは​派遣料金の​低いリードも​獲得してしまうことが​課題でした。​また​派遣先の​決定数や​派遣料金、​派遣期間を​考慮した​ LTV などの​指標は、​ユーザー登録よりも​リードタイムを​要する​ため​そのまま​広告運用の​ KPI に​するのも​困難でした。

営業と​マーケティングで​違った​ KPI を​「そろえる」

トライトグループでも、​まずは​社内の​目線を​そろえる​ことから​始めました。

それまで、​営業部門は​派遣先の​決定数、​マーケティング部門は​ユーザー登録数と​部門間で​異なる​ KPI を​設定していました。​売り上げに​直結する​目標設定が​できていなかった​ため、​マーケティング部門の​目標を​派遣先の​決定や​派遣料金を​考慮した​目標に​する​ことで​「ねじれ」の​解消を​試みました。

まずは​マーケティング部門に​おいて、​派遣先の​決定率が​高い​顧客属性を​特定する​ために​データ基盤を​整備。​その​結果、​建設業界の​経験者の​派遣先決定率が​高いことが​わかった​ため、​その​分析を​営業部門に​共有しました。

目線を​合わせて​ KPI を​再定義した​結果、​マーケティング部門では​派遣先決定の​見込みが​高い​リードの​獲得に​注力し、​営業部門では​そのリードに​対して​効率的に​リソースを​強化できるようになりました。

新 KPI 達成に​向け、​VBB 入札に​切り替え

ただし、​KPI に​定めた​経験者の​獲得は​すぐには​進みませんでした。​その​理由は、​未経験者も​「施工管理 求人」など​経験者と​同じ​キーワードで​検索し、​それに​紐づいた​検索広告を​通じて​サイトを​訪れる​ためです。

従来の​目標コンバージョン単価での​入札は、​いずれの​ CV も​同じ​ 1 件と​して​入札を​行います。​つまり、​未経験者と​経験者を​同じ​価値と​して​入札を​進めてしまった​結果、​本来優先すべき経験者の​獲得に​対して​最適化できていなかったのです。​そこで、​CV 値に​応じて​ Google AI が​入札を​調節する​ VBB に​切り​替えました。

まず​経験者と​未経験者を、それぞれデモグラフィック​データや​職種などの​セグメントに​分け、​セグメントごとに​派遣先の​決定率や​派遣料金から​試算した​ CV 値を​付与。​この際、​各セグメントの​最適な​ CV 値を​探る​ために、​PDCA を​繰り返して​最適化を​図りました。

最初に​課題に​なったのは、​Google AI に​「経験者を​優先的に​獲得する」と​いう​キャンペーンの​意図を​どう​理解させ、​入札の​最適化に​つなげるかでした。​当初運用していた​ VBB モデルでは、​CV 値の​設定が​複雑かつ Google AI に​キャンペーンの​意図を​正しく​理解させる​ことが​難しかった​ため、​優先したい​見込み顧客に​対して​学習が​進まず、​結果と​して​経験者の​獲得に​つながらなかったのです。

その後は​およそ​ 1 年半に​わたって、​何度か​ CV 値の​定義を​変えながら、​試行錯誤を​繰り返しました。

最終的には、​1 日ごとに​数値の​変化を​追うのではなく、​一定の​幅を​持たせた​期間で​過去実績と​比較して​成果を​評価する​方​法に​変えた​ところ、​新しい​ VBB モデルが​うまく​機能していた​ことが​判明したのです。

派遣先の​決定率、​派遣料金とも​ 2 ケタ改善

目標コンバージョン単価入札と​比べ、​VBB の​入札では​その後の​成約率が​ 1.6 ポイント増加し、​成約単価も​ 26% 改善(*1)。​ ROAS は​ 16% 向上しました​(*2)

また​ VBB が​機能し始めた​ことで、​獲得したいリードに​対して​優先的に​入札できるようになり、​併せて​部分​一致キーワードを​最大限に​活用して、​より​幅広い​顧客層を​獲得する​こともできるようになりました。

この​部分​一致の​活用に​よる​メリットは​大きく、​以前の​目標コンバージョン単価での​入札と​目標広告費用対効果での​入札を​比べると、​複数の​マッチタイプで​運用していた​キャンペーンに​対して、​すべての​キーワードを​部分​一致に​変更した​キャンペーンでは、​ROAS が​ 31% 改善したのです。

な​お、​P-MAX キャンペーンでも​同じ​ VBB の​モデルを​使用して​テストを​しており、​現時点では​検索広告と​同等の​ ROAS が​確認できています。

価値の高い潜在顧客を更に獲得する方法を図示。価値を重視した入札戦略でコンバージョン価値を高め、キーワードのマッチタイプを拡張することでコンバージョン数を高める

トライトの​三原元気氏​(マーケティング本部​ デジタルマーケティング課)は、​「Google AI を​活用する​ことで、​ビジネス目標の​成果を​改善でき、​これまで​当たり前だった​目標 CV 単価の​広告運用から​前進できました。​また、​関連部署との​連携を​深める​良い​機会に​なりました。​今回の​事例を​踏まえて​他の​サービスでも​同様の​取り組みが​できればと​考えています」と​話しています。

VBB を​成功させる​ために、​マーケターが​心がけるべきことは

今回取り上げた 2 社は​ VBB の​導入で​ビジネス成長を​実現しましたが、​それを​支えたのは、​部門を​超えた​連携や​データを​計測できる​環境の​整備です。​これらは​ VBB の​運用に​限らず、​マーケティングを​起点に​ビジネス成長を​実現する​必須条件でもあります。

冒頭で​取り上げたように、​こうした​一連の​取り組みは、​企業の​成長に​応じて​調整を​重ねていかなければいけません。​そのたびに​成果を​上げるには、​運用と​振り返りを​重ねる​ことが​重要です。​VBB に​関しても​一度​設定したら​終わりではなく、​キャンペーン予算や​目標 ROAS 値、​CV 値などの​検証を​通じて、​さらなる​最適化を​模索する​必要が​あります。

AI や​機械学習の​進化に​伴い、​広告の​細かな​設定などを​自動化できるようになった​ことで、​マーケターの​負荷は​減ったかもしれません。​しかし​その分、​AI の​学習効率を​さらに​高めて​いく​ためには、​マーケターに​よる​継続的な​検討こそが​重要に​なっているのです。

Contributor:高柳岳士​(金融業界担当 インダストリー・マネージャー)​/ 伊原春奈​(人材業界担当 アカウント・マネージャー)​/ 松井開​(人材業界担当 アカウント・マネージャー)

2024/06/01 22:30 記事を​更新。​初出時、​KARTE Signals の​説明に​誤りが​あった​ため、​文章を​適宜修正しました。

384_Historyofsearch_A.2e16d0ba.fill-228x220.format-webp

高沢 数樹

パフォーマンスソリューション担当 プロダクトエキスパート

出典 (2)

*1: Google 広告の​カスタムテストで​検証

*2: ROAS は​「成約率や​売上単価に​基づいて​設定した​独自の​売上予想額/広告費」で​算出

ページ​先頭に​戻る