紹介企業について
「クラシック デザインの魅力を京都から世界へ」をコンセプトに 2020 年に設立された株式会社KUOE GLOBAL。自社工房で組み立てる日本製の機械式腕時計を、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)モデルで 30 か国以上に展開するクラシック デザイン ウォッチ ブランドです。京都本店・東京表参道店を構える一方、売上の 7〜8 割を海外市場が占め、米国・英国・カナダ・欧州を中心にグローバルなファン層を拡大しています。
創業当初はオンライン販売のみでスタート。2022 年には京都本社の一角にショールームを開設しました。2024 年に京都本店、2026 年には東京・表参道にも店舗をオープンし、現在の売上構成比はオフライン 66%、オンライン 28%、卸売 6% となっています。
「Google 広告は、最もリーチの幅が広い広告だと思っていますし、使わない理由がないと思っています。検索だけでなく YouTube やさまざまなプラット フォーム上に展開できる点が魅力的です」
株式会社KUOE GLOBAL 代表取締役 / 販売責任者
内村 健二 様
課題
2020 年、内村氏は「クラシック デザインの魅力を京都から世界へ」発信するブランドとして KUOE GLOBAL を立ち上げました。立ち上げ当初から海外市場をメインに据えていましたが、当時の認知獲得手段は SNS 広告に限られており、能動的に検索する顕在層以外へのリーチには限界がありました。
「SNS 広告だけでカスタマーに対してもっと認知を広げていくにはどうしたらいいかわからず、限界を感じていました」と内村氏は振り返ります。
創業初期はクラウド ファンディングや SNS 発信、海外の腕時計インフルエンサーへのギフティングによって徐々に認知を獲得していたものの、広告パフォーマンスだけを見れば赤字が続く時期が数年に及びました。認知も信頼もゼロの海外市場でブランドを育てるには、潜在層・顕在層の双方に的確にアプローチできる新たな施策が必要で、当時の広告投資規模は月数百万円程度でした。
解決策
こういった経緯もあり同社は Google 広告の本格導入を決定しました。オンライン売上拡大の中核には、ショッピング フィードを活用した P-MAX キャンペーンを据え、直近では来店促進を目的に、Google マップと連動した来店目標(ストア目標)に基づく P-MAX キャンペーンも活用しています。ブランド認知の拡大には、YouTube の動画キャンペーンとデマンド ジェネレーションを採用し、ロサンゼルスやニューヨークなど都市単位でのターゲティングも行っています。
市場展開においては、まず最初は最もマーケットが大きく日本からの輸出がし易いアメリカをターゲットにしました。その後市場を広げていく際には、エリアを絞り込まず英語圏・非英語圏を広く対象に配信を始めました。こうした初期の市場開拓フェーズを経て、コンバージョンがついたエリアに絞った運用に移行する手法を採用してきました。現在は米国・英国・カナダ・欧州を中心に注力する一方、台湾・香港・シンガポールなどアジア圏の拡大も検討しています。
クリエイティブでは、クオリティを重視し、3D グラフィックスや自社工房での組み立て風景、京都らしさを伝える映像を採用するとともに、商品写真だけでなく制作背景や職人の手仕事、使用シーンなども盛り込み、ブランドの世界観を翻訳して伝えることを意識してきました。
運用体制も段階的に進化しました。当初は内村氏を含む社内の数名が 兼任で広告を運用していましたが、タグ計測の設定が混乱していた時期もあったといいます。2024 年後半からは Google の専任担当者によるサポートが始まり、計測環境を整理しました。
これによって正確なデータが取得できるようになったことを起点にし、2025 年からは月 3,000 万〜5,000 万円規模まで広告投資を拡大しています。なお、クリエイティブにおける AI 活用はまだ本格化していないものの、広告文の多言語展開には翻訳ツールを活用しており、P-MAX や検索キャンペーンの AI による自動最適化(スマート設定)が成果を支える重要な要素と言えます。
海外展開では国ごとの事情も無視できません。韓国は現地の正規販売店が独自にマーケティングを行っているため直接的な配信は限定的、ブラジルなど南米は関税の高さが障壁となり当初の配信では十分な効果が得られなかったといいます。こうした市場ごとの反応の違いを踏まえ、まずは小さく配信して反応を見極め、効果の出たエリアに投資を寄せていくという段階的なアプローチを徹底しています。
結果
P-MAX の最適化を中心とした施策強化により、同社は大きな成果を上げました。コンバージョン値は前年比 +1,720%、コンバージョン数は +2,640% という驚異的な伸びを記録し、2025 年の売上全体も前年比 +137% の大幅増となっています。さらに、海外向けの認知施策の強化により海外指名検索リフトは +378% に到達し、米国での認知拡大施策は来店数 +105.3% という成長にもつながりました。
オフライン店舗での購入者を対象にしたアンケートでは、約 85% が来店前にすでにブランドを認知していたと回答しており、Google 広告による認知施策が来店・購入に大きく貢献していることが裏付けられています。今後はより高い CVR(コンバージョン率)と成長率を目指し、クリエイティブを含めた国別キャンペーンの最適化をさらに進めていく方針です。
また、広告効果の面では、P-MAX や検索キャンペーンにおける自動最適化のシグナルが、効率的な配信エリアの見極めに寄与しました。
まとめ
海外展開は最初の 1 年程度は数値が伸びにくいことが珍しくなく、そこで投資を引いてしまうブランドも少なくありません。重要なのは、短期の ROAS(広告費用対効果)だけで判断せず、データが蓄積されるまで継続し、反応の良かった市場・施策に投資を寄せていくことです。
同社の成長を支えたのは、短期的な数値だけでなく長期的な視点でブランドを育てるという内村氏の一貫した姿勢でした。2022 年、本社の一角を小さなショールームとして開放したことが売上拡大の転機となり、その後 2024 年には京都に正式な店舗を、2026 年には東京・表参道にも店舗をオープンしました。インバウンド需要の高まりとともにオフライン売上は大きく伸長しています。
「海外市場をリスクが高い市場として捉えるのではなく、最初から進出すべき市場として捉えていました。とにかくまずやってみる。反応を見る。改善する。うまくいく市場に投資を寄せる。その繰り返しでした」と内村氏は語ります。
今後はアジア圏(台湾・香港・シンガポール)への展開強化と、CRM(顧客関係管理)を活用した国内店舗への来店促進が重点テーマです。中長期的には 2029 年頃まで国内店舗網を拡大し、その先で海外店舗展開も視野に入れています。同社は Google 広告という拡張組織を活用しながら、京都発のクラフト マンシップを世界へ伝える歩みを続けていきます。