Google の AI を活用した広告の成果を最大限に引き出すには、インプットするデータの質と量の双方が求められます。AI は提供されたデータを学習材料として成長し、その学習結果を広告の配信精度として還元するからです。
・CV データの充実 : AI を賢く動かす良質な燃料
AI のパフォーマンスは学習するデータに直接紐づいています。AI モデルが高性能なエンジンであるなら、そこに投入される質の高いデータは良質な燃料のようなものです。その裏返しとして、AI 活用には「自動化されているからこそ」のリスクも存在します。投入するデータに不備や欠落があると、AI が誤った学習を行ってしまうというリスクです。
例えば、コンバージョンしたユーザーデータの一部が、何らかの理由で Google 広告に記録できなかったとします。すると、そのユーザーに関する情報は Google の AI の学習データから永遠に失われ、ユーザーの特徴や広告を表示すべきかどうかの判断に誤りが生じます。こうした誤りが積み重なると、AI は入札の強弱を正しくつけられなくなり、本来獲得できていたはずの成果を逃すリスクが生じるのです。
・負のループを断ち切り、正の連鎖を作る
学習に用いる コンバージョン データが減ると学習精度が低下し、入札判断にズレが生じます。その結果、成果が悪化することでさらにインプットできるデータが減る負のループに陥りかねません。
このような機会損失を防ぐには、できる限り多くの コンバージョン データを Google 広告にインプットする必要があります。データを増やすことで入札精度を上げ、それによって学習精度が改善し、成果が伸びることでさらにデータが蓄積されていく。この正の連鎖を作り出していくことが広告の AI 活用において重要です。
・計測はすべての土台
Google の AI 活用において、計測はすべての土台です。家を建てる際、土台となる耐震構造(計測基盤)がしっかりと整っているからこそ、その上に築かれるクリエイティブや運用という柱や壁が本来の強さを発揮し、広告の価値を最大化します。
計測するには、ウェブサイト、アプリ、実店舗といったあらゆる接点(タッチポイント)でのユーザー行動を漏れなく収集できるデータ基盤が欠かせません。収集したデータにより、一人ひとりの顧客理解が深まり、よりパーソナライズされた効果的な広告配信が可能になります。
計測の欠落が招く広告パフォーマンスの停滞
AI による自動最適化が主流となった今、広告運用の成否は AI にインプットするデータの質と量にかかっています。しかし、現在の計測環境では、意図せずデータの欠落が発生し、パフォーマンスにマイナスの影響を与えています。
データの欠落を招く要因の一つは、ユーザー行動の複雑化です。デバイスやブラウザをまたいで情報収集を行うユーザーが増加し、広告との接点も多様化しています。また、検討期間が長い商材ほど広告クリックからコンバージョンまでの期間も長期化する傾向にあります。このため、広告インタラクションとコンバージョンを紐づける難易度が上がっています。
加えて、Safari の ITP(Intelligent Tracking Prevention)などの機能により、タグの読み込みや通信そのものが遮断され、デバイスやメディアを超えた計測ができないケースがあります。これにより、実際の成果と計測データとの間にギャップが生じています。
また、日本の改正個人情報保護法や欧州の GDPR などの法規制により、世界的にデータの取り扱いが厳格化されています。そのため、ユーザーからの同意のないデータ収集は難しくなっています。
そして、デバイスやブラウザをまたいで情報収集を行うユーザーが増加し、広告との接点も多様化したことで、クリックなどの広告インタラクションとコンバージョンを紐づける難易度は大きく上昇しています。
複数の要因による計測漏れが「このユーザー層は成果につながらない」という誤った学習データになり、本来ターゲットにすべき層への入札をAIが弱めてしまうことがあります。
こうした環境の変化に対応し、AI の性能を 100% 引き出すためには、従来のタグ計測を補完し、きめ細やかにデータを収集できるように整備する必要があります。
Google の新機能:Google タグ ゲートウェイによる計測基盤の構築
Google の AI の学習精度を向上させ、広告成果を飛躍させるには、AI にインプットする情報の質を高め、量を増やす必要があります。Google ではこの取り組みを「CV データの充実度」と定義し、大きく分けて 2 つのアプローチを推奨しています。
1. CV タグの動作範囲を最大化する(Google タグ ゲートウェイ)
コンバージョンは広告最適化におけるゴール地点です。コンバージョンを正しく認識できない状態は、目的地がはっきりしないまま車を走らせ続けるようなものであり、AI は目的地へたどり着くための「最短ルート」を学習することができません。
そこでまずやるべきことが、Google タグ ゲートウェイの導入により、データの漏れを防ぐ強固なデータ基盤を構築しコンバージョン タグの動作範囲を最大化することです。
- タグのカバレッジ向上:サイト内のすべての重要なページにタグが行き渡っている状態(網羅性)を確保し、計測漏れを防ぎます。
- Cookie データの確実な捕捉:短期間で消えてしまいがちな Cookie 情報を、技術的な工夫でしっかり維持、活用できるようにします。
- Google タグ ゲートウェイの活用:広告主自身のサーバー側で Google タグ ゲートウェイを動作させる(ホストする)ことで、ブラウザの制限を受けにくい安定した計測環境を構築します。
2. 計測シグナルを拡張する(拡張コンバージョン)
コンバージョンの有無が判断できたとしても、クリックやエンゲージド ビューなどの広告インタラクションと紐づけることができなければ精度の高い学習にはつながりません。目的地には到着したものの、そこに至るまでの道順を覚えていなければ、最適なルートを判断できないのと同様です。そこで計測基盤により、AI がより賢く判断できるように収集できるシグナルを拡張します。
- 拡張コンバージョンの利用 : ユーザーから同意を得たメール アドレスなどの情報を活用し、Cookie だけでは追いきれないコンバージョンを補足します。
- 多様なシグナルの紐付け : 従来の Google 広告クリック識別子(GCLID)に加え、GBRAID や WBRAID(iOS や Mac 環境向けのプライバシー保護に対応した計測用識別子)、IP アドレス、セッション情報などを組み合わせます。これにより、ユーザーがどの広告と、いつ接触したのかという広告とのインタラクションをより正確に特定し、広告成果を評価できるようになります。
Google タグ ゲートウェイについてはこちらで解説していますのでご確認ください。
真のコンバージョンであるオフライン コンバージョンを計測するリードの拡張コンバージョン
コンバージョンには、オンラインで完結するもの(資料請求など)と、その後の商談や実店舗での購入といったオフライン コンバージョンの 2 種類があります。
ウェブサイトからの問い合わせはあくまで通過点であり、その後の成約や契約こそが「真のゴール」です。広告配信の最適化を最大化するためには、このオフラインの成果をデータとして Google 広告にフィードバックする仕組みが欠かせません。
そこで活用されるのが、「リードの拡張コンバージョン」という機能です。
リードの拡張コンバージョンの仕組み
データの取得 : ユーザーがフォーム入力をした際、Google タグまたは Google タグ マネージャーがメールアドレスなどの個人データ(PII)をハッシュ化(復元不可能なデータに変換)して Google 広告へ送信します。
オフラインでの成約 : 広告主は、最終的な契約に至った個人データを顧客管理システム(CRM)に登録し、後に面談や成約した顧客のデータをハッシュ化して Google 広告にアップロードします。
マッチング : 両者のハッシュ値が一致すれば、オフラインの成果が広告の成果として記録されます。
これまでは「GCLID (クリック ID)」に依存していましたが、Cookie 規制の影響で ID の取得が難しくなっています。リードの拡張コンバージョンは、ユーザーの同意を得たファースト パーティ データを照合に利用するため、プライバシーに配慮しつつ精度の高い計測を実現できます。
拡張コンバージョン(ウェブ向け)、リードの拡張コンバージョン、オフライン コンバージョンのインポートの違い
データ欠損を補い広告の成果を計測・最適化することを実現する拡張コンバージョンには、拡張コンバージョン(ウェブ向け)、リードの拡張コンバージョン、オフライン コンバージョンのインポート (OCI)があります。
拡張コンバージョン(ウェブ向け)は、予約や会員登録などウェブサイトで完結する行動を、ユーザーのメールアドレス(PII)などをハッシュ化してマッチキーとして計測します。
リードの拡張コンバージョンは、オフライン コンバージョンを計測する仕組みです。たとえば、ウェブサイトで資料請求したユーザーが、後日面談や成約した場合、ユーザーのハッシュ化されたメールアドレスや、電話番号などのファースト パーティ データをマッチキーにして計測します。
オフライン コンバージョンのインポートは、従来の手法で、GCLID だけを頼りに、オフラインの成果を紐付ける方法で、広告クリックの際に GCLID を発行するという実装が必要です。
リードの拡張コンバージョンはファースト パーティ データを利用するため、より正確で質の高い測定が可能です。その結果、AI による入札単価設定の精度が上がり、パフォーマンス向上が期待できます。
リードの拡張コンバージョンの実装の前提条件
リードの拡張コンバージョンの実装に入る前に以下の要件を満たしていることを確認してください。
技術要件
- サイトワイド タグの設定
ファースト パーティ データを適切に取得できるように、Google タグまたは Google タグ マネージャーを使用し、コンバージョン リンカーが設定されていること。 - 顧客データの取得
フォーム上で、照合に必要なファースト パーティ データ(メールアドレスなど)を適切に取得できていること。
*2024 年 4 月現在 : タグでの取得を前提とします。 - オフライン コンバージョンのアップロード方法の確認
ファースト パーティ データを用いたコンバージョンをアップロードするには、Google 広告データ マネージャーまたは Data Manager API を通じて連携してください。具体的には、Google 広告データ マネージャーを使用した CRM との直接連携、CSV や Google スプレッドシートを用いた連携、あるいは Data Manager API による連携を検討してください。
顧客情報取扱要件
広告主様は、自社に代わって広告測定サービスを実施する第三者( Google など)と顧客情報を共有することを、顧客に開示する必要があります。また、法律で義務付けられている場合は、こうした情報の共有と使用について顧客の同意を取得することも必要です。必ず法務部門へ確認を行ってください。
リードの拡張コンバージョン実装手順
Step 1 : Google 広告管理画面で「顧客データに関する規約」に同意
「目標」 -「設定 」で「顧客データに関する規約」に同意します。
クライアント センター(MCC)アカウントで設定・管理するコンバージョンでも、アカウント別に規約への同意が必要です。
Step 2 : 「リードの拡張コンバージョン」を有効化
「目標」 -「設定 」で「リードの拡張コンバージョン」を有効化します。
ユーザー提供データの取得方法(Google タグ または Google タグ マネージャー)を選択します。
Step 3 : Google タグ、Google タグ マネージャー実装
実装方法の詳細は以下を参照してください。
・リードの拡張コンバージョン用に Google タグを設定する場合はこちらをご確認ください。
・Google タグ マネージャーでリードの拡張コンバージョンを設定する場合はこちらをご確認ください。
Step 4 : 新しいコンバージョン アクションの作成
(オフライン コンバージョンのインポートをアップグレードする場合は省略可)
「Google 広告」-「コンバージョン 」-「概要」-「コンバージョン アクションを作成」してください。既存の オフライン コンバージョン にも設定できますが、まずはテスト用に新規作成を推奨します。クライアント センター (MCC)アカウント で管理している場合は、MCC で作成してください。
Step 5 : オフライン コンバージョン データをインポート
広告主の環境内にデータを用意することで、Google 広告データ マネージャーを通じて、直接データを取得できます。Salesforce、HubSpot、Zoho、Zapierなどは、直接連携することができます。これらのツールをご利用の場合は、自社 CRM からデータを CSV や Google スプレッドシートにインポートする方法がよく使われています。Google ドライブに保存した CSV ファイルや Google スプレッドシートと直接連携する方法もあります。
Step 6 : Google 広告管理画面で効果測定と設定を検証
実装後、管理画面でデータが正しく反映されているか確認します。
よくある質問
事例 : いすゞ自動車、リードの拡張コンバージョン 活用で質の高いリードが 67% 増加
いすゞ自動車は、単なるリード件数ではなく、質の高いリード(成約に近い見込み客)の獲得を重視し、リードの拡張コンバージョン を導入しました。
課題 : 無効なリードの増加と、デジタル投資の正確な影響が見えにくいこと。
施策 : 検索のインテント マッチ、P-MAX キャンペーン、リードの拡張コンバージョン を組み合わせた AI ソリューションを段階的に導入。
フェーズ 1 : より多くの見込み顧客を獲得するためのインテント マッチと自動入札
フェーズ 2 : 検索に加えて P-MAX キャンペーンを追加し、新しい顧客インサイトを獲得し、チャネル全体でより良い最適化を実施
フェーズ 3 : リードの拡張コンバージョン(ECL)を導入し、質の高いリードをより良く最適化
AI に質の高いコンバージョンデータを学習させることで、獲得効率を劇的に改善できました。
質の高いリードの獲得
質の高いリード獲得単価
まとめ
すべてのビジネスにおいて、オンラインの引き合いをオフラインの「成約」へとつなげ、その結果を正しく広告運用にフィードバックすることは、Google 広告の最適化の上で重要です。
今回ご紹介した「リードの拡張コンバージョン」を活用すれば、 データ環境の変化に左右されず、精度の高い計測が可能になります。何より、 Google の AI に深いコンバージョン(面談や成約など)を学習させることで、より質の高い見込み顧客への配信が最適化されるのが最大のメリットです。
まずは自社の CRM 連携やCSV/スプレッドシートでのインポートなど、着手しやすい方法から始めてみましょう。Google タグ ゲートウェイ で整えた基盤に、リードの拡張コンバージョン という質の高いコンバージョン データを流し込むことで、Google の AI はさらに賢く進化し、ビジネスを力強く後押ししてくれます。
こちらの動画でも「リードの拡張コンバージョン」を題材に、詳しく解説していますのでご覧ください。